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渋った馬場で何が起きるか — 芝とダートで逆に動く

雨が降ると「馬場が渋る」と言います。このとき、芝とダートでは起きることが正反対です。芝は水を含むほど重く遅くなり、ダートは締まってむしろ速くなる。馬場発表の仕組みから順に整理します。

良・稍重・重・不良は誰が決めているのか

馬場状態は芝・ダートそれぞれ良・稍重・重・不良の4段階で発表されます。JRAは各競馬場のゴール前と4コーナーの2地点で土を採取し、含水率(土に含まれる水分の割合)を計測・公表しています。

ただし状態の発表は数値の機械判定ではありません。含水率を参考にしつつ、最終的には係員が実際にコースを踏んで確かめた上で決めています。

含水率の目安をひとつ挙げると、東京の公表例で芝の「良」は17%以下、「不良」は22%超。ダートは「良」が10%未満、「不良」は16%超です。基準は土質によって競馬場ごとに違うので、この数字は一例として見てください。

芝は遅くなり、ダートは速くなる

ここがこの記事の核心です。芝は水を含むと路盤が柔らかくなり、脚を取られて走破タイムが落ちます。切れ味の勝負から、パワーと持続力の勝負へ寄っていきます。

ダートは逆です。乾いた砂は力が逃げますが、湿ると砂が締まって固くなり、走破タイムはむしろ速くなります。脚抜きが良くなる、という言い方をします。軽快なスピード型に向く方向です。

つまり同じ「重」の表記でも、芝とダートではレースの質が逆方向に変わります。「道悪巧者」という言葉を見たら、芝の話かダートの話かをまず確かめる価値があります。

クッション値 — 芝の硬さの公表値

2020年9月からは、芝の反発力を測った「クッション値」もJRAから公表されています。おもりを落として跳ね返りを測る方式(クレッグハンマー)です。

目安は、12以上が硬め、10〜12がやや硬め、8〜10が標準、7〜8がやや軟らかめ、7以下が軟らかめ。数値が高い=硬い=時計が出やすい馬場です。

含水率と逆方向に動く傾向はありますが、1対1の対応ではありません。芝の生育状況や路盤の状態も効く、とJRA自身が注記しています。速い時計の出やすさを見るならクッション値、と覚えておくと使い分けやすいはずです。

洋芝という別世界

札幌と函館の2場は、他の8場と芝の種類そのものが違うオール洋芝です。密に生えて水分を含みやすく、時計がかかります。夏の北海道開催で走破タイムが遅いのは、馬のせいではなくコースの仕様です。時計面の比較は洋芝と野芝を分けて考える必要があります。

事前情報としての限界と使い方

馬場状態は当日まで動く情報で、レース前に確定しません。事前に使えるのは「渋った馬場を経験してどうだったか」という過去走の実績と、当日の他レースの決まり方です。

また、雨は枠の有利不利も動かします。渋った芝では内有利が消えやすい——コースの偏りの記事で書いた「偏りは固定ではない」の一因が、この馬場変化です。

含水率の閾値は競馬場ごとに異なります。本文の数値はJRA公表の東京の例です。
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